カルパッチョ物語

アド山

2011年09月29日 16:47

アドマーニのディナーのプリフィイクスの中に、必ずと言っていいほど登場している「◯◯のシンプルなカルパッチョ」
カルパッチョは皆さんもよくご存知でしょう。
そんな中、わざわざ「シンプルな」とつけて、そしてこうしてブログのネタにしてしまう、そんなアドマーニのカルパッチョの話を一つ。


カルパッチョについて細かく述べる時間がないので(汗)、4/3・ヴェネトの会こちらにオリジナルのカルパッチョについて多少説明していますので是非ご参照ください。

そんなカルパッチョですが、アドマーニでは基本魚です。可能な限り天然の白身魚です。
ちなみに、今夜は串木野産のホウボウです!

ホウボウって、美味しいんだよね。。。
クセもなくて、実際鮮度が良いとこれはかなり美味しい魚ですよ。焼いても煮込んでも美味しい。
もっと注目を集めていい魚なんですけどね・・・。


で、話を完全にホウボウに飛ばしそうなので(汗)、そうそうカルパッチョです。

料理教室でもやった事がありますが、非常に簡単な作り方です。

お皿に、魚の切り身を並べて、塩、こしょうをふり、EXVオリーブオイルをたっぷりとかける。トマトのコンカッセとネギを散らす。



これだけです。見た目も非常にシンプル。もうちょっと飾った方が良いんじゃね?位の物です。


ね、家でも出来んじゃん。




行程だけ見ればそうです。
では、どうぞ作って下さい。はたしてそこに出来上がる物が同じ物であるかどうか。

家で出来る、作れる、って事と、その料理を再現する事は違います。
このカルパッチョはそんな事を教えてくれた、更にもっと深い事を教えてくれた料理です。


実際、本当に簡単な料理です。
レモンもふりません。邪魔だからです。必要ないからです。

本当にシンプルです。

これはかなり長い事このやり方で作っていますが、色々と考えなかったでもない。
もうちょっと豪華に見えるようにした方が良いんじゃないか、もうちょっと何かを組み合わせて複雑にした方が良いんじゃないか、確かにこれで充分に美味しいんだけど、これって家でも出来ちゃうんじゃないか、ってね。


とあるお客様がいらっしゃいました。
男性の方です。当時、本当に頻繁にいらっしゃいました。
頻繁にいらっしゃるのだけど、プリフィックスで食べる料理は、アンティパスト(前菜)は必ずカルパッチョ、セコンド(主菜)はひなもりポークのアイ・フェッリとほぼ決まっていました。
たまには、他の料理をオススメする事もありましたけど、そういう時はだいたいお勧めの物を食べて下さる、だけど基本は変わらず。

やっぱり不思議に思うんですよ。
他の料理をオススメしたとき、本当に喜んで下さる。
だけど、やっぱりカルパッチョとアイ・フェッリなんですよ、この人は。

だから、あるとき、思い切って聞いてみました。「飽きないですか?」と(笑



帰って来た答えは意外な物で、そして深かったのです。

「だって、この(二つの)料理には、シェフのオリジナリティーがある。だから、僕はそれを食べにきているんだ。」

共に、非常にシンプルな料理です。言い方を変えれば、手抜きともとられかねないほど簡単。
だけど、そこにオリジナリティーがある、と。


最初は全然意味が分からなかった。
そりゃ分かりませんよ。塩ふってオリーブオイルかけただけでしょ?焼いて、塩、こしょうふってオリーブオイルかけただけでしょ?って。そこに、一体どんなオリジナリティーが存在するんだって。





簡単な話なんですよね。
今は分かります。
だから、この二つの料理は今のアドマーニの料理の基本形でもあります。

行程だけでは見えない事。伝えようとする事。そこにはっきりと息吹くもの。



今ははっきりと分かります。
だから、この料理は、形だけなら誰でも作れる。だけど、アドマーニのカルパッチョは私にしか作れない。
なぜならそれは私のオリジナリティーだから。
そこにあった物に気がつかなかったけれども、気付かせてくれた人がいる。そしてそれに気付けた。

本当に有り難い事だと思います。

そのそのオリジナリティーは、そのまま今のすべての料理に。



そんなカルパッチョの写真がない事が非常に残念です。。。


←今度誰かカルパッチョ食べて写真をうpして下さい。

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